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2023.10.26
介護の人員配置基準とは?もし違反したら処分の対象になる?
介護施設では、医師、看護師、介護士などが働いていますが、利用者や入居者に対して一定のサービスを提供するためには、介護に関わる職員の人員配置が非常に重要と言えるでしょう。この人員配置を定めている制度が、厚生労働省が定める人員配置基準です。ここでは、人員配置基準の概要、計算方法、違反した際のペナルティについて、詳しく解説します。
1.人員配置基準とは介護業界の入居者や利用者数に対する人員配置の基準
2.介護業界の人員配置基準と計算方法は施設ごとに異なる
3.違反すると指定取り消しやサービス停止処分もありうる
4.今回のまとめ
人員配置基準とは介護業界の入居者や利用者数に対する人員配置の基準
人員配置基準は、厚生労働省が定めている介護保険法に基づく制度であり、介護施設において適切な医療・介護を提供するために、専門資格を持った人材を一定数以上配置することを義務付けたものです。
介護施設には、有料老人ホーム、グループホーム、サービスつき高齢者向け住宅などがあり、施設の規模は様々です。施設の種類や規模によって、必要となる職種や人数が異なります。人員配置基準は、介護業界の入居者や利用者数に対して必要な専門資格を持った人材を確保し、適切なサービスを提供することが目的です。
規定は介護施設ごとに異なりますが、人員配置基準の人数はあくまでも常勤の総数であり、常駐しているということではありません。例えば、人員配置基準が3:1の場合、入居者3人に対して、1人の介護職員もしくは看護職員が配置されることを意味します。
より手厚いサービスを提供するには、1人の介護職員や看護職員に対して入居者の人数が少ない方が良いでしょう。しかし、少子高齢化により人材確保が難しくなるため、人員配置基準を緩和する動きもあり、より柔軟な対応が可能になると期待されています。
介護業界の人員配置基準と計算方法は施設ごとに異なる
常勤換算は、常勤かつ専従する職員を1とした場合、その介護施設で働く職員数がどれくらいに相当するかを計算するものです。介護業界の人員配置基準は施設ごとに異なり、介護施設の担当者は人員配置基準をもとに、適切な人員を配置しなくてはなりません。常勤換算人数は、下記の計算式を使えば簡単に計算できます。
常勤職員の人数+(非常勤職員の労働時間の合計÷常勤職員の定められた勤務時間)=常勤換算人数
例えば、常勤職員が12人で、常勤職員の定められた勤務時間が1週間40時間の介護施設があるとし、非常勤職員が4人いて、4人の労働時間の合計が84時間の場合、数字を計算式に当てはめて計算すると、常勤換算人数は14.1人です。
12人+(84時間÷40時間)=常勤換算人数14.1人
ここでポイントとなるのは、常勤と非常勤の違いが雇用形態ではなく、勤務時間が正社員の勤務時間に達しているかどうかで、達している場合は常勤になります。また、所定勤務時間が週32時間以下の場合は、週32時間を基本として計算する必要があります。
違反すると指定取り消しやサービス停止処分もありうる
人員配置基準は義務として定められており、これに違反すると、良質なケアが提供できなくなるだけでなく、ペナルティの対象となります。
違反した場合の処分内容
介護施設では、人員配置だけでなく、設備や運営において違反の疑いがある場合、予告なしに監査が行われるのが一般的です。監査により、人員配置基準に違反していることが判明した場合の主な処分内容をご説明します。
指定取り消し
介護事業を行うためには、都道府県知事から指定を受ける必要があり、指定取り消しとなると、5年から10年間は指定を受けることができなくなるため、重い処分です。
指定効力停止処分
事業内容の一部または全部が一定期間制限されます。期間が過ぎれば、再申請を行わずに事業を再開することが可能です。
人員配置基準違反の例外
関連法が改正され制度が移行中の場合や、新型コロナウイルス感染拡大などの緊急事態が発生した場合は、違反をしても例外とされる場合があります。ただし、これらの例外は一時的なものであり、通常の運用が再開される際には改めて適切な人員配置を行う必要があるため、注意が必要です。
今回のまとめ
介護施設の人員配置は、人員配置基準に適合するように行わなければなりませんが、基準が施設ごとに異なり計算式で算出できます。介護施設は人員配置基準を順守することが義務付けられており、基準に違反した場合は、指定取り消しや指定効力停止処分などの行政処分を受ける可能性があるため、施設は常に注意を払い、適切な人員配置が必要です。
また、人員配置基準に沿って適切な配置をしていても、職員の予期せぬ離職などが生じることも考えられるため、施設は柔軟に対応し、人員配置の調整を行いながら利用者の安全と適切なサービス提供を確保する必要があります。人員配置は利用者のケアに直結する重要な要素であり、十分な人員確保と職員の定着に努めることが、良質な介護サービスの提供に繋がるでしょう。