お知らせ・コラム Column
Column
2023.10.31
介護者が押さえておきたい食事介助の手順と注意点
高齢者にとって食事は大きな楽しみの一つです。介護職の資格取得においても、食事介助は基本的な介護技術の一つとして学びます。快適で安全な食事介助を提供するためには、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。ここでは、食事の準備、食事中、食後のケアの各段階において、介護者が知っておきたい食事介助の手順とポイントを解説します。
食事介助の前に準備するべきこと
食事介助では、利用者が安全かつ快適に食事を楽しむために、工夫と同時に安全性への配慮が重要です。事前の準備が大切であり、食事の安全性は利用者の個別の健康状態や身体状況によって異なります。そのため、飲み込み機能である「嚥下機能」の状態に応じた柔らかい食事や流動食などの食事形態を選択することが必要です。また、アレルギー食や食事制限の有無を確認し、間違いのないよう注意しなければなりません。
食事環境の整備も大切で、食事をする場の衛生管理はもちろんのこと、適切な高さのテーブルや椅子の用意も必要です。食べこぼしで衣類が汚れる心配がある場合には、エプロンなどを使用して覆う工夫や、スプーンや滑りにくい食器などの選択も利用者が自分で食べやすくするための重要なポイントになります。
食事の前には、利用者のトイレ介助や手指の洗浄消毒をきちんと行うなど、安全で快適な食事介助をするために、配慮と準備をしっかり行いましょう。
食事介助を行う際の手順と注意点
実際の食事介助の際には、介護者も手指の洗浄消毒を行い、マスクを着用します。また、利用者に圧迫感を与えないように介護者用のイスを用意し、利用者の隣に座ることで利用者の視線が水平になるように配慮が必要です。これにより、利用者が介護者を見上げてしまい食べ物や水分が気道に入り込むリスクを防げます。
利用者はイスに深く腰掛けさせ、足を床にしっかりとつけて安定した正しい姿勢になるように促しましょう。特に傾きやすい利用者には、必要に応じてクッションや背もたれで姿勢を調整します。
食事の進行も利用者のペースに合わせることが大切です。利用者が自分で食べることが難しい場合は、食事を口に運ぶ手助けをしますが、口に入っているものを飲み込み終わってから次の食事を運ぶように心掛けます。食事中にむせてしまった場合は、むせが治まってから食事を再開することが重要です。
食後のケアについて
食事が終わった後は、誤嚥を防ぎ、食べたものをしっかり消化するために適切なケアが必要で、利用者の口の中に飲み込めていない食物がないか確認し、残っていた場合は掻き出します。また、歯ブラシや綿棒を使って口腔内をきれいにして、発声や呼吸の際に食物残渣が気道に入らないよう環境を整えることが必要です。飲み込めなかった食事については、次回から形態や調理方法を工夫するか、提供しないように気を付けてください。
介護施設では、食事量だけでなく、食事の際に摂取した水分量もチェックし、また服薬チェックの記録も必要です。
食後は、利用者の体位を調整して胃の負担を軽減し、逆流も防ぐよう心掛けます。特に食後に横になる際には、胃の圧迫を避けるためにベッドの角度を調整し、食後しばらくは嘔吐やむせこみの有無など、利用者の身体状況を観察して、異変があれば適切な対応を行うことが重要です。これらのケアを丁寧に行うことで、利用者が安心して食事を楽しむことができ、健康に対するサポートがより効果的になります。
今回のまとめ
毎日の食事は利用者の楽しみだけでなく、健康を守るためにも重要です。介護者は食事介助を行う前に、利用者の健康状態や食事制限について確認しなければなりません。食事介助の際には利用者の姿勢や食事の適温に気を配り、利用者のペースで進めるよう心掛けてください。食事後は口腔内をきれいにして、ベッドの角度や座り方を調整したりして逆流と誤嚥を防ぐよう注意しましょう。これらの丁寧なケアにより、利用者は安心して食事を楽しむことができ、健康を維持するために必要な栄養を摂取できます。