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2023.12.28

日本でも取り組みが普及しているノーリフティングケアの目的やメリット

身体介護が多い介護の職場において、「ノーリフティングケア」が取り入れられ始めていることをご存じでしょうか。ノーリフティングケアは、日本でも取り組みが広がっている負担の少ない介護方法です。ここでは、ノーリフティングケアの目的や誕生の背景と、介護する側だけでなく、介護される利用者にとってどんなメリットがあるのか解説します。

介護施設で導入が進んでいるノーリフティングケア

ノーリフティングケアとは、介護をする際に利用者を力ずくで持ち上げたり、抱えたり、引きずったりせず、人力に頼らないケアのことです。ノーリフティングケアでは、引きずるのでなく摩擦の少ない敷物や手袋を使って滑らせて介護をしたり、抱え上げるのではなく福祉用具を使って吊り上げて移動したりします。また、寝たままや座ったままで浴槽に入ることができる特殊浴槽もノーリフティングケアの一つです。
多くの介護施設では、利用者の状況に合わせたノーリフティングケアを取り入れています。加えて、介護職員自身も力で動かそうとせずに、膝や肘でテコの原理を活用するなどボディーメカニクスを意識することが大切です。仕事着も介護しやすい伸縮性のある衣類を選ぶようにしましょう。

ノーリフティングケアの目的と誕生の背景

ノーリフティングケアは、オーストラリアで腰を痛めて仕事を辞める看護師が増えて人手不足になったことから、離職対策として看護師連盟が1998年に始めた取り組みです。この活動では、介護者の腰痛のリスクを高める人間の力だけに頼った介護を禁止して、適切な福祉用具の使用を推奨しています。
介護者の腰に負担をかける5つの動作、「押す」「引く」「持ち上げる」「運ぶ」「身体をねじる」を、福祉用具などの力を借りてなるべく少なくすることを目標としています。これら動作は、介護される利用者にとっても摩擦や圧迫が起きやすく心身への負担が大きい介護です。介護職自身にとってノーリフティングケアの目的は腰痛予防ですが、利用者にとっても安全で自立支援につながります。

介護を受ける側と介護する側の両方に与えるメリット

ノーリフティングケアは、介護を受ける利用者と介護を提供する介護職員の双方にメリットがある介護方法です。
介護を受ける利用者は、体に触れる介助や、移乗などの持ち上げられる介護を受ける際に、「うまくやってもらえなかったらどうしよう」という不安を多少なりとも感じています。自分に合った福祉用具を利用した介護を受けることで、利用者は安心して身を任せられますし、介護の質の平準化が図れるでしょう。また、リフティングによる圧迫や摩擦による苦痛からも解放されるため、事故や床ずれのリスクが最小限に抑えられる点もメリットです。
介護を提供する介護職も、ノーリフティングケアで介護することで「腰を痛めたらどうしよう」という不安から解消され、末永く介護職として働き続けられるでしょう。そのため、ノーリフティングケアを実現する環境整備を整備すると、人手不足の解消にもつながる可能性があります。

今回のまとめ

ノーリフティングケアは、介護職の腰に負担をかける「押す」「引く」「持ち上げる」「運ぶ」「身体をねじる」といった動作を、福祉用具などの力を借りて極力減らした介護方法です。力に頼らないため提供する介護の平準化が図れ、介護される利用者も安心して身を任せられるのがメリットです。リフティングによる圧迫や摩擦を最小限に抑えられるため、床ずれや事故の防止にも役立つでしょう。