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2024.04.19

令和6年度介護報酬改定〜訪問介護について〜

訪問介護は今回の介護報酬改定によって、加算の創設や要件緩和がありました。しかし減算項目(基本報酬減算、同一建物減算の厳格化)のほうが、大きく目立つ結果となりました。今回の記事では加算・減算項目の紹介と、減算の背景について解説します。

・今回変更となった加算項目について
今回の改定により創設もしくは変更となった加算項目について紹介します。

・口腔連携強化加算の創設
これは職員(事業所)と歯科専門職の連携を促し、高齢者へ適切な口腔管理の実施に繋げることを目的とした加算です。
算定のために、職員が口腔評価を行う際に、歯科専門職へ相談できる体制を確保し、文書で取り決める必要があります。単位数は、1ヶ月に1回を限度に1回50単位です。

・認知症ケア加算の見直し
今回、認知症専門ケア加算(Ⅰ)と(Ⅱ)のどちらも単位数は変わりません。
ただし、下記のように要件が緩和されており、取得しやすくなっています。
(Ⅰ)に関しては、対象者の認知症自立度がⅡ以上に変更
(Ⅱ)に関しては、対象者の認知症自立度Ⅲ以上の利用者が100分の20以上に変更

・介護職員処遇改善加算の創設(これまでの加算の一本化)
これまで介護職員の処遇改善を目的に行われていた3つの加算(処遇改善、特定処遇改善、ベースアップ等支援加算)を今回一本化しています。一本化された理由は、複雑な申請を簡易化し、できるだけ多くの事業所に活用してもらうためです。この加算は、経験・技能のある職員へ重点的な配分を明記していますが、職種に着目した配分ルールは設けておらず、事業所内で柔軟な配分を認められています。

単位数は、以下の通りです。
Ⅰ 24.5%、Ⅱ 22.4%、Ⅲ 18.2%、Ⅳ 14.5%

・特定事業所加算の見直し
看取りなど重症者へのサービス提供や、中山間地域等で継続的にサービスを提供している事業所の適正評価の目的で見直されています。具体的には、特定事業所加算(Ⅳ)の加算率が5%から3%に減算され、加算率3%の(V)が新設されました。

今回変更となった減算項目について

訪問介護は、これまで高い利益率を誇っていました。そのため大きな変化として、基本報酬の減算や、同一建物等のサービス提供における厳格化が行われました。

・基本報酬の減算
身体介護は4〜12単位減、生活援助は4もしくは5単位減となっています。また通院等乗降援助や身体介護直後の生活援助は2単位減です。

・同一建物減算におけるサービス提供の厳格化
訪問介護におけるサービス提供の割合は、同一建物等居住者が増えています。そのため訪問件数自体は増えているにも関わらず、移動時間と距離は必然的に短くなっているのが実情です。そうした実情を踏まえて、今回、同一建物等居住者へのサービス提供における、報酬適正化を行う新たな区分と見直しが行われました。
これにより、これまで10%の減算で済んだケースであっても、サービス内容と同一建物等の居住者割合によっては12%減算される事態となっています。

・業務継続計画未策定減算の創設
感染症や災害などの有事の際に、事業を継続できるための計画を立てることを、徹底するために創設されたものです。これにより、感染症・災害のどちらかもしくはどちらかの計画未策定の場合、基本報酬から1%減算されます。経過措置が設けられており、期限は令和7年3月31日です。

・高齢者虐待防止措置未実施減算の創設
すべての介護サービス事業者に、利用者の人権擁護・虐待の防止を推進するために創設されたものです。これは、虐待の発生もしくは再発防止策を講じていない場合、基本報酬を1%減算します。さらに高齢者虐待防止に向けて、各事業所にハラスメントの相談窓口を設置させ、介護職員等も利用できるよう明確化しています。

・身体的拘束等の適正化の推進
義務付けられた対応ができていない場合、短期入所サービスや多機能型サービスの基本報酬を減算するものです。訪問系サービスは、これまで通り、緊急時かつやむを得ない場合のみの拘束ができ、加えて拘束後の詳細な記録が義務付けられています。

・基本報酬減算の背景とそれに対する国の見解について

・基本報酬減算の背景
訪問介護の基本報酬を引き下げる判断に至った理由は、訪問介護の利益率が2022年度決算で7.8%と、全サービス平均の2.4%を大幅に上回ったこと、今回の処遇改善率が訪問介護は、他のサービスより高い加算率(最大24.5%〜最低14.5%)となっているため、訪問介護事業所は必ずしも損をしているわけではないという国の見解があります。最下位の加算率でさえ、特養や老健、通所介護などの最上位加算率より高いです。

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html
参考:厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jittai23/index.html