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2024.06.24

2024年度の高齢者虐待防止・身体的拘束等の適正化について正しく知ろう!

2024年4月の介護保険制度改定によって、居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く全ての事業所において、高齢者虐待の対策委員会の設置や指針整備が義務付けられました。

そこで今回の記事では、高齢者虐待防止や身体的拘束の適正化について解説します。

①2024年度からすべての介護施設や事業所で虐待防止が義務化された

介護施設においては、以前から高齢者虐待の対策委員会や指針整備が義務づけられていました。2024年度からは、居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く全ての事業所について、以下のことが義務付けられています。 

  1. 虐待防止の対策委員会を定期的に開催
  2. 1の結果をスタッフへ周知徹底
  3. 虐待防止のための指針を整備
  4. スタッフを対象とする虐待防止研修を定期的に開催
  5. 上記を実行する担当者を定めること

※身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会は3月に1回以上開催 

上記の条項が実施されていない場合、高齢者虐待防止措置未実施減算によって、単位数の100分の1が減算となってしまいます。

【参考】厚生労働省 令和6年度介護報酬改定における改定事項について(P.49~51)

②虐待や身体拘束の現状について

ここでは、令和4年度の厚生労働省調査による資料をもとに、虐待や身体拘束の現状について紹介いたします。現状を正しく知り、防止に役立てていただけると幸いです。

虐待の件数について

令和4年度に全国で発生した介護施設従事者による高齢者虐待に関する相談通報件数は、2,795件でした。令和3年は2,390件だったので、約17%増加していることになります。そのうち、虐待と判断されたのは856件でした。令和3年の739件に比べると、こちらも約16%増加しています。

虐待の要因について 

介護のプロフェッショナルが多くいる介護施設で、なぜ虐待が起こるのでしょうか。厚生労働省の調査による発生要因は以下の通りです。

 

  1. 教育・知識・介護技術等に関する問題 56.1%
  2. 職員のストレスや感情コントロールの問題 23.0%
  3. 虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等 22.5%
  4. 倫理観や理念の欠如 17.9%
  5. 人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ 11.6%(複数回答)

 

以上から、最も多いのは「教育・知識・介護技術等に関する問題」でした。教育や知識が不足すれば、倫理観にも影響します。施設内で、しっかり教育や研修が実施されれば、虐待防止が期待できるのです。

また、職員のストレスや人員不足などの言葉も見られます。施設内での働きやすさなど、職員の労働環境について整備することも重要です。

虐待の傾向について

厚生労働省による調査の結果について、全体的な傾向を以下にまとめました 。参考として捉えていただければと思います。

内容
虐待が発生した施設 特養が32.0%と最も多く、次いで有料老人ホームが25.8%、グループホーム11.9%、介護老人保健施設が10.5%。
虐待の内容 もっとも多かったのは、身体的虐待が57.6%、ついで心理的虐待33%、介護等放棄23.2%。また、虐待のうち身体拘束に当てはまるのは全体の約22%。
認知症との関係 認知症の症状が進行している人は、身体的虐待を受けている割合が多い。反対に心理的虐待を受けている割合は低い。
要介護度との関係 介護度が軽い人は、身体的虐待を受けている割合が低い。反対に要介護5の人は、心理的虐待を受けている割合が低い傾向にある。

特養や有料老人ホームでの発生数が多く挙げられますが、これは施設数に比例していると考えられます。内容に関しては、どの施設でも身体的虐待が最も多く報告されています。また、虐待のうち約22%が身体拘束を伴うものでした。この結果から、虐待と身体拘束の関連性は無視できないと言えます。

防止には、「どのような行為が虐待とみなされるか」など、正しい知識を持つことが有効です。

【参考】厚生労働省 令和4年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果

③介護職に求められる虐待と身体拘束の知識

介護職は、正しい知識を持つことが求められます。ここでは、虐待と身体拘束について詳しく解説します。

虐待について

種類と特徴について、以下の表にまとめました。

虐待の種類 特徴
身体的虐待 殴る、蹴る、縛るなど、身体に直接的な暴力を振るう行為。怪我やアザが生じることが多い。
心理的虐待 侮辱や脅迫、無視など、精神的に高齢者を追い詰める行為。うつ症状や不安を引き起こす。
ネグレクト(介護等の放棄) 介護や支援を怠り、高齢者を衰弱させる行為。必要な食事や医療を提供しないことで、健康状態が悪化する。
性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること、させること。被害者に深刻な心理的トラウマを与える。
経済的虐待 高齢者の財産や資産を不正に使用する行為。無断での預金引き出しや資産売却など、不当に利益を得ること。

身体拘束について

医療や介護現場において、安全を確保する観点からやむを得ないものとして行われてきた経緯があります。しかし高齢者に不安や怒り屈辱などの大きな精神的苦痛を与えてきたのも事実です。

高齢者が権利を迫害される身体拘束は、原則として虐待に当てはまる行為と考えられます。介護保険指定基準では、以下の行為が身体拘束とされています。

  1. 一人歩きしないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  2. 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
  3. 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
  4. 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
  5. 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
  6. 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
  7. 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
  8. 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
  9. 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
  10. 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
  11. 自分の意思であけることのできない居室等に隔離する。

【参考】令和5年度老人保健健康増進等事業 介護施設・事業所等で働く方々への

身体拘束廃止・防止の手引き (P.5)

身体拘束が認められるケースについて

利用者の生命または身体を保護するための緊急やむを得ない場合には、身体拘束が認められています。しかし、以下の3つの要件を満たし、要件の確認などの手続きを極めて慎重に行うことが求められます。

  1. 切迫性:本人や他の利用者が危険にさらされる場合
  2. 非代替性:他に代替する方法がないこと
  3. 一時性:一時的なものであること

【参考】令和5年度老人保健健康増進等事業 介護施設・事業所等で働く方々への

身体拘束廃止・防止の手引き (P.20)

以上の3つの要件を全て満たす状態であることを、関係者で検討し、記録を残す必要があります。

④介護職として明るく元気に働くために必要な知識を持とう!

どれだけ良いケアを提供していても、正しい知識がなければ虐待や身体拘束を行ってしまう可能性があります。定期的に委員会や研修会を開催し、施設のスタッフ全員が正しい知識を持つことで、適切なケアが提供できるのです。

努力は、自分の成長や利用者の安心に繋がります。介護職としてレベルアップするためにも、これからも知識を向上させる努力を続けましょう。