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2023.07.31
介護士の離職率は他職種と比べて高くない?離職の実態と今後の課題について
資格を活かせる職業であり、高齢化する日本においても需要が高い介護士ですが、長く続けられるかどうか心配な方も少なくありません。介護職の離職率が高いという印象を持たれる方も多いですが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは、介護士の離職率とその実態について解説します。
介護士の離職率と他職種との比較
介護士の離職率は高いと言われますが、果たして本当に高いのか、他の職種の離職率と比較して検討してみましょう。
公益財団法人介護労働安定センターの令和3年度「介護労働実態調査」によると、介護職として働く方の離職率は令和2年で14.9%となっています。この値だけ見ても離職率が高いかどうかは分かりにくいので、他の職種とも比較してみましょう。
厚生労働省が発表した令和2年上半期雇用動向調査結果を見てみると、介護職よりも離職率が高いのが宿泊業・飲食サービス業で15.3%です。このことから、介護士の離職率のみが極めて高いというわけではないことが分かります。
他の職種を見ると、教育・学習支援業が12.2%、サービス業が11.0%となり、この4つの職種が上位になっているのが現状です。介護分野に近しい医療・福祉分野は8.8%で推移しています。
介護離職ゼロに向けた政府の対策について
前項では離職率が極めて高いわけではないということがお分かりいただけたと思いますが、一方で低いわけではないため、介護関係職の離職を防ぐために、政府では介護職員処遇改善加算などの対策が講じられています。
介護職員処遇改善加算とは、働いている事業所がある条件を満たしていれば、その事業所に介護職員1人当たりに対して手当が支給される制度です。この政策によって介護職員が働く環境を改善し、離職率を防ぐことを狙っていました。
しかし、支給した手当が確実に介護職に賃金として還元されているか不明であったということもあり、福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金を2022年2月より開始し、介護職員に対して収入を3%程度(月額9,000円相当)引き上げるための措置が開始されています。
その他にも、再就職を促進するための支援制度や職場体験などで介護職の魅力を発信、保育所の設置による定着促進など離職防止対策が政府主導で進められているのです。
介護職の現場で離職を防ぐための改善策とは
介護職に対して離職を防ぐために、さまざまな取り組みが行われています。ただし、政府だけでなく働く場となる介護施設などの事業所が離職を防ぐための対策をしなければ、離職率を下げることは難しいでしょう。
介護職の現場で離職を防ぐための改善策としては以下の2つが挙げられます。
人間関係を改善する
介護職の離職理由の上位に挙げられることから、コミュニケーションが円滑にして良い人間関係を築けるように施設全体で働きかけることが求められます。働く人だけに人間関係を任せるのではなく、施設全体で課題として取り上げて、面談の機会を増やすことや、相談・意見交換がしやすいような体制づくりが必要です。
結婚・出産後に働きやすい環境を整える
結婚や出産は、介護職の離職理由で2番目に多いとされるライフイベントです。このライフイベントを経験しても無理なく働き続けられるように、育休制度などのサポート制度の他、パートタイムなどの労働時間の優遇などの対策が挙げられます。
今回のまとめ
介護職の離職率は高い傾向にありますが、他の職種と比べて極めて高いわけではありません。特に、政府は近年介護職の離職率に着目しており、介護職の定着率を上げるように様々な政策を打ち出しています。介護職に限らず、離職を防ぐためには職場の人間関係や働きやすさも重要です。政府だけでなく施設側が離職防止のために取り組んでいる対策なども、確認しておきましょう。