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2023.08.10

軽視されることが少なくない介護現場における高齢者の権利擁護とは

「高齢者の権利擁護」とは、高齢者の権利も正当に守られるべきだという考え方です。当たり前のように感じますが、実は介護現場においてはこの高齢者の権利擁護が軽視されてしまうケースもあり得ます。高齢者をサポートする立場でありながら、なぜ高齢者の権利擁護が軽視されてしまうのでしょうか。
ここでは、その理由を含め、高齢者の権利擁護について解説します。

権利の侵害は介護への無理解から起こることが多い

権利の侵害でよく耳にするのが、虐待です。虐待と一口に言っても種類は様々。殴ったり蹴ったりなど身体に影響を与える「身体的虐待」、悪口を言ったり無視したりなどの精神的に苦痛を与える「心理的虐待」、性的な嫌がらせを行う「性的虐待」、食事や入浴などの介護を行わない「介護・世話の放棄・放任」、高齢者の資産を好き勝手使用する「経済的虐待」などがあります。
こうした虐待から高齢者を守るには、介護への理解が必要不可欠。特に認知症の高齢者は自分の意思を伝えるのが苦手だったり忘れやすかったりすることから、虐待のターゲットになりやすいのです。そうした場合、周囲の理解を得ることで虐待を防ぎやすくなります。介護をしている人だけでなく、地域住民が認知症高齢者の行動に理解を示し見守ることで権利の侵害は抑えられるのです。

介護職の人が権利擁護を軽視してしまう理由

「介護施設で介護職員による虐待があった」などといった事件を、ニュースで取り上げているのを目にすることがあります。そもそも高齢者の権利は守られるべきであり、それは介護職員も理解しているはずです。ストレスのはけ口として高齢者に暴力を振るうなどもってのほかですが、知らず知らずのうちに介護職の人が権利擁護を軽視してしまうことがあります。
それが、介護対象である高齢者のことを思うばかりに権利を侵害してしまうケース。「食事を上手に食べられないから、介護職員が手で口を開けて食べさせた」「水を欲しがるけれども、夜トイレが近くなるから控えさせた」など、要介護者のことを思っての行動にも見えます。しかし、介護を受ける側からすれば無理矢理された行為となり、人として尊重されていないと感じるかもしれません。介護職員の無自覚による行動が起因となって、権利の侵害をしてしまうことがあり得るのです。

権利擁護の正しい認識が介護職の責務

介護職は、介護の必要な高齢者などが日常の生活を送れるようにサポートするのが仕事です。「この人のためだから」と、介護の範疇から出た行動を取ってしまうと権利の侵害になってしまう可能性があるので、注意してください。
今は介護職に就いていても、いつかは自分も介護を受ける立場になるかもしれません。その時にどんな介護をしてもらいたいかを考えることで、すべき行動が見えてくるはずです。また、介護職員同士で連携し、互いの介護の方法に問題がないかどうかチェックするのも良いでしょう。権利擁護の重要性を理解して業務に取り組むことで、要介護者の高い満足度が得られるのです。

今回のまとめ

高齢者の権利擁護は、高齢者への権利侵害をなくし、与えられた権利を守るためにあります。ただし、周囲の理解なくして高齢者の権利擁護を行うのは難しいことです。介護職という立場からの善意による行動は、もしかすると介護の対象となる高齢者にとっては権利侵害に値するかもしれません。そうならないためにも、権利擁護とは何かを正しく理解して、介護に従事することが大切です。